AI採用を行う5つのデメリットとは?メリットや効果的に行うポイント・活用事例を徹底解説

求人スカウトや書類選考、面接などにAIを活用する「AI採用」は、デジタル技術の進化や働き方の多様化により、導入する企業が年々増加傾向です。
効率化や公平性の向上といったメリットがある一方で、バイアスの再現や人間的な魅力の見落としといったデメリットも存在します。
本記事では、実際の採用現場でのAIの活用事例をもとに、その利点と課題について詳しく解説します。
AI採用とは?

AI採用とは、採用活動の各プロセスにAI技術を活用することで、業務の効率化や選考の質向上を図る手法です。
書類選考や適性検査の分析、面接スケジュールの調整、チャットボットによる一次対応など、これまで人手で行っていた業務をAIが自動化・サポートします。
ただし、すべての判断をAIに委ねるのではなく、人の直感や経験と組み合わせることで、より精度の高い採用が可能となります。
また、AI採用はエンジニアや専門職に限らず、アルバイトやパートなど幅広い職種・雇用形態で活用が進んでおり、企業規模を問わず導入が広がりつつあるでしょう。
AI採用における現状

2023年度の調査によると、採用活動においてAIツールを「活用した」と回答した企業は全体の43.0%に達しており、一定の普及が進んでいることがわかります。
中でも活用が多かったのは「求人票の制作」(60.5%)で、「スカウト」「WEB面接」(各31.4%)、「選考の評価」「適性検査」(各27.9%)など、採用フローのさまざまな場面でAIが利用されています。
一方で、マイナビの転職動向調査では、2023年に転職した人のうちAI面接を「受けたことがある」と答えた割合は17.7%で、過去2年よりやや減少傾向です。こうしたデータから、AI採用はまだ一部企業にとどまるものの、現実的な活用が進んでおり、今後さらに広がっていく可能性があることが示されています。
AI採用を行う5つのデメリット

①AI採用の導入コストの発生
採用担当者の業務は、求人媒体の選定や管理、応募者対応、選考の進行など多岐にわたり、負担が大きいのが実情です。
AIを導入することで、マッチ度の高い候補者の抽出や広告配信、面接設定などの手間を削減でき、業務効率の向上や人件費削減にもつながります。
一方で、AI採用には「判断基準がブラックボックス化しやすい」「データに偏りがあると選考にも偏りが生まれる」といったデメリットもあります。導入する際は、AIに任せきりにせず、人の目で補完する体制が重要です。結果として、採用担当者は空いたリソースを研修や定着支援など、本質的な業務に充てることができるようになります。
②AIだけで潜在能力は判断不可
AI採用では、書類や質疑応答の内容だけでなく、表情や声のトーンなど非言語情報も含めてマッチ度を評価することが可能です。
ただし、これらはすべて過去の蓄積データに基づくものであり、応募者の潜在能力や成長意欲、熱意といった定量化しづらい要素までは正確に判断できないという限界があります。
こうした点はAI採用の大きなデメリットであり、優秀な人材を見落とすリスクにもつながります。
そのため、書類選考や一次スクリーニングといった定型業務にはAIを活用しつつ、最終的な判断や候補者の人間性の見極めは採用担当者が担うなど、人とAIの役割分担を意識することが重要です。
③AI学習用の過去のデータが必要
AIは機械学習によって精度を高めていく仕組みのため、過去の採用データが多いほど評価の正確性が向上します。
そのため、大規模な採用実績を持つ大手企業であればAIの力を十分に活用できますが、これまでの応募者数が限られている中小企業では、AIに過度な精度を期待するのは難しいのが現実です。
これはAI採用のデメリットの一つであり、初期段階では判断のばらつきや信頼性に課題が生じる可能性もあります。こうしたリスクを避けるためにも、まずは「応募者の絞り込み」や「マッチ度の高い候補者への広告配信」「面接日程の調整」など、一部業務に限定してAIを導入し、徐々にデータを蓄積していくことが現実的なアプローチと言えるでしょう。
④差別的な傾向を助長する可能性
実際にはAI自体が過去のデータに基づいて学習するため、もともと人間の判断に含まれていた偏見や差別的傾向を引き継いでしまうリスクも存在します。
これはAI採用の大きなデメリットの一つです。
実際に海外では、黒人に多い名前の応募者が低評価を受けたり、職歴に空白期間があるだけで候補者から除外されるといった事例も報告されています。
AIは公平に見える一方で、その判断基準がブラックボックス化しやすく、気づかぬうちに不適切な選考が行われてしまう可能性があるため、慎重な運用と人の介在が不可欠です。
⑤応募の減少や選考辞退の可能性
採用活動にAIを取り入れることで業務効率は向上しますが、一方で応募者の減少や選考辞退につながるリスクもあります。
日本では生成AIの活用が海外と比べて遅れており、AIが面接を担当することに対して抵抗感を持つ人も少なくありません。「AIに自分の人間性が理解できるのか」といった不信感や違和感を抱かれることもあり、応募者にとっては面接官の人柄を通じて企業の雰囲気を知ることも重要な判断材料です。
実際、マイナビの調査ではAI面接があることで6割以上が「受験意欲が下がる」と回答しており、これはAI採用の大きなデメリットの一つと言えます。
特に面接など人間的な接点が重視される場面では、AIの導入には慎重な検討が必要です。
AI採用を行う4つのメリット

①人件費削減
採用担当者は、求人媒体の選定や掲載管理、応募者対応、選考フローの運用など幅広い業務を担っており、日々多忙を極めています。
こうした中でAIを導入すれば、マッチ度の高い候補者の抽出や広告配信、面接日程の調整といった、時間と手間のかかるプロセスを自動化でき、担当者の業務負担軽減や人件費の削減に大きく貢献します。
また、業務に余裕が生まれれば、入社後の研修や定着支援といった本質的な業務にも注力できるでしょう。
一方で、AI採用には「人間の感覚では拾えるはずの熱意やポテンシャルを見落とす可能性」や、「過去のデータに基づくバイアスの再生産」といったデメリットも存在します。
そのため、AIに任せきりにするのではなく、人的判断とうまく組み合わせながら活用することが重要です。
②公平な採用の実現
採用活動では、担当者の価値観や経験、感情によって判断にばらつきが生じることがあり、それが選考の一貫性や公平性を損なう原因となることもあります。
AI採用を活用すれば、事前に設定された客観的な評価基準に基づいて候補者を判断できるため、属人的な判断を避け、公平性の高い採用を実現できる点は大きなメリットです。
しかしその一方で、AIは過去のデータに学習して判断を下すため、元のデータに偏りが含まれていれば、そのバイアスを再現してしまう可能性もあります。
また、評価のプロセスがブラックボックス化しやすく、なぜその結果に至ったのかが不明瞭になる点もAI採用のデメリットです。
公平性を高めるには、AIの判断を鵜呑みにせず、人によるチェックと組み合わせることが不可欠です。
③スケジュール調整のしやすさ
AI面接を導入することで、採用担当者が日程を調整する手間が省け、応募者は自分の都合に合わせたタイミングで面接を受けることが可能です。
これにより、スケジュールのすれ違いによる面接機会の損失を防ぎ、結果として雇用のチャンスを逃さずに済むというメリットがあります。
また、担当者の面接対応やスケジュール管理にかかる工数も大幅に削減され、採用業務の効率化に繋がるでしょう。
ただし、AI面接にはデメリットも存在します。
たとえば、画面越しで機械に話すことに抵抗を感じる応募者も多く、「AIに自分の良さが伝わるのか」という不安や不信感から選考辞退につながる可能性があります。
また、非言語的な魅力や人間性といった要素をAIが正確に判断するのは難しく、優秀な人材を見落とすリスクもあるため、導入には慎重な検討が必要です。
④自社のアピールに時間を割くことが可能
採用担当者は、自社にマッチする人材を見極めるために多くの時間を費やす一方で、求人媒体の管理や面接調整など他の業務にも追われます。そして、自社の魅力を十分に伝える機会を確保できないケースも少なくありません。
こうした状況でAIを活用すれば、マッチ度の高い応募者の絞り込みや面接対応、情報収集、評価作業の効率化が可能になり、担当者は空いた時間を使って自社の事業方針やカルチャー、魅力を伝えることに注力できます。
その結果、より多くの応募者を惹きつけることができるうえ、入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できるでしょう。
ただし、AIによる選考では、応募者の熱意や人間的な魅力、将来性といった要素を十分に汲み取るのが難しい点がデメリットです。
また、評価基準がブラックボックス化しやすく、誤った判断を下すリスクもあるため、AIの結果を鵜呑みにせず、人の目で補完する体制づくりが欠かせません。
AI採用の活用方法

求人媒体での活用方法
AIを導入している求人媒体を活用すれば、自社で新たにシステムを構築する手間なく、AIを活かした効率的な採用活動が可能です。
すでに「マイナビバイト」や「Indeed」などでは、AIがマッチ度の高い求職者への広告表示やオファー配信、スカウト文の自動生成などを行っており、気づかぬうちに利用しているケースもあります。
ただし、AIは過去データに基づいて判断するため、独自性のある人材や潜在能力の高い求職者を見落とす可能性がある点は、AI採用のデメリットとして留意すべきです。
適性検査での活用方法
書類選考にもAIを活用することができ、過去の採用者のESや履歴書、自社の求める人物像を学習させることで、マッチ度の高い応募者を自動で絞り込むことが可能です。
データが多ければ多いほどAIの判断精度は向上し、効率的な選考が実現します。
ただし、過去のデータに偏りがある場合、AIもそのバイアスを引き継いでしまう可能性があり、有望な人材を見落とすリスクがある点はAI採用のデメリットとして注意が必要です。
面接での活用方法
面接の場面でもAIは活用されており、候補者との日程調整や、面接の録画データをもとにした分析、さらにはAI自身が質問を行い、回答内容を深掘りして評価することも可能です。
AIは表情や声のトーンからマッチ度を判断する機能も備えており、効率的な選考が期待できます。
ただし、感情や熱意などの微妙なニュアンスを正確に読み取るのは難しく、評価の偏りやブラックボックス化といったデメリットもあり、最終判断は人の目で補うことが重要です。
AI採用を効果的に行うポイント

自社が求める人材を明確にしておく
AIにマッチ度の高い人材を正確に評価させるためには、単に過去の採用データを蓄積するだけでは不十分です。
自社が求める人物像や具体的な採用基準を明確に設定し、それをAIに学習させることで、より的確な人材の絞り込みが可能になります。
ただし、設定が曖昧だったり偏っていたりすると、AIの判断も不正確になり、適性のある候補者を見落とす恐れがあります。
このような精度のばらつきはAI採用のデメリットの一つです。
手軽に利用できる求人媒体や適性検査から始める
AIを導入している求人媒体の活用や、適性検査のAI評価などは、コストを抑えて手軽に始められるAI採用の手法として有効です。
特に初めてAI採用に取り組む場合は、求人媒体に搭載されている「絞り込み機能」や「マッチ度の高い求職者への広告表示・オファー機能」から活用するのがおすすめです。
ただし、AIの判断は入力データの質に大きく左右され、誤った条件設定や偏ったデータに基づくと、適切な人材を見逃す可能性がある点はデメリットとして認識しておくことが大切になってきます。
個人情報を取り扱いを厳重に行う
採用業務では、応募者の履歴書や評価情報など多くの個人情報を扱うため、情報管理の徹底が欠かせません。
万が一、個人情報が漏えいすれば、企業の信頼性は大きく損なわれる可能性があります。
AIを活用する際にも同様で、特に生成AIなどにデータを入力する際は、外部への情報流出リスクを常に念頭に置く必要があります。
このような背景から、AI採用を導入する企業は、AIの使用範囲や取り扱う情報のレベルについて明確な基準を設け、従業員全体に共有・周知することが重要です。AIの便利さに頼りすぎると、意図せぬ形で機密情報が漏れるリスクがあることは、AI採用の大きなデメリットのひとつです。
技術面だけでなく、情報管理体制の整備と運用ルールの徹底が、安心・安全なAI活用には欠かせません。
AIだけでなく人による評価も取り入れる
AIを採用業務に活用する際は、どの工程をAIに任せ、どこを人が担うかをあらかじめ明確にしておくことが重要です。適用範囲を限定しておくことで、万が一問題が発生した場合でも迅速に対応しやすく、導入後の管理負担も軽減できます。
一般的には、スクリーニングや性格診断、適性検査、ソーシングなどの初期段階でAIを活用するのが効果的とされており、自社の採用フローに合わせて導入ポイントを見極めることが大切です。
ただし、AIは万能ではなく、応募者の人柄や企業との相性、熱意といった人間的な要素の判断には限界があります。
また、応募書類の表現がAIにとって解釈しづらい場合、内容が優れていても適切に評価されないリスクもあります。
これらはAI採用のデメリットであり、すべてをAIに委ねてしまうと、本来採用すべき人材を見落とす可能性も否定できません。
そのため、AIの分析結果と人間の経験や直感を照らし合わせながら、相互に補完し合う体制を整えることが、より精度の高い採用判断につながります。
AI採用を導入している企業事例3選

株式会社ヒューマネージが行った調査によると、2018年の時点ですでに約5%の企業がAIを活用した採用手法を導入しています。さらに全体の約26%、つまり4社に1社が導入済み・導入準備中・もしくは導入を検討している段階であることが明らかになっています。
これは、当時からすでにAI採用に対する関心や期待が高まっていたことを示す結果です。
それから数年が経過し、AI技術の進化とともに採用業務の効率化や属人化の解消といったニーズがより一層高まっている現在では、AI採用を導入する企業はさらに増加していると考えられます。
大手企業を中心に活用が進む一方で、近年では中小企業やベンチャー企業においても、AIを一部プロセスに取り入れる動きが広がっており、AI採用は今や特別な取り組みではなく、選考フローの一部として現実的な選択肢になりつつあります。
・株式会社阪急阪神百貨店
・ソフトバンク株式会社
・株式会社吉野家
株式会社阪急阪神百貨店

画像引用:https://www.hankyu-hanshin-dept.co.jp/recruit.html
株式会社阪急阪神百貨店は、新卒採用においてタレンタ株式会社の録画型AI面接ツール「HireVue(ハイアービュー)」を導入しました。
これにより全応募者の社会人基礎力をAIが客観的に分析し、さらに人事が動画を確認するハイブリッド型の選考で、多様な人材の確保と業務の効率化を実現しました。
一方で、AIは表現力や話し方の癖に影響を受けやすく、熱意や個性を正確に評価しきれないリスクもあり、見落としの可能性がある点はAI採用のデメリットと言えます。
ソフトバンク株式会社

画像引用:https://www.softbank.jp/recruit/
ソフトバンク株式会社では、2020年に総合職採用におけるグループディスカッションや集団面接を廃止し、面接時の動画データをもとにAIが自動で評価・合否判定を行うシステムを導入しました。
不合格とされた応募者の動画は人事が確認し、最終判断は人が担うことで正確性を確保しています。
ただし、AIによる評価は表現の仕方や話し方に左右されやすく、応募者の本質やポテンシャルを見落とす可能性もあり、これがAI採用のデメリットのひとつとされています。
株式会社吉野家

画像引用:https://www.yoshinoya.com/baito/op71872/?utm_source=corporate&utm_medium=banner&utm_campaign=recruit
株式会社吉野家では、アルバイト採用にAI面接サービス「SHaiN」を導入し、ドタキャンによる機会損失の削減や、不採用候補との無駄な面接を回避することで、効率的な採用を実現しています。
さらに、業務にマッチした人材を選定できるようになり、応募から初勤務までの期間短縮にも成功しています。
一方で、AIによる評価では応募者の熱意や柔軟性など人間的な要素を正確に見極めづらいというデメリットもあり、過信せず人の判断と組み合わせた活用が求められるでしょう。
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監修者プロフィール

- 株式会社Delightは、採用領域に特化したコンサルティング企業として、企業の「人材」課題を多角的にサポートしています。求人広告代理店として20種類以上の大手媒体を扱い、最適な提案を行うほか、自社で培った新卒・中途採用のノウハウを活かし、採用戦略立案から面接代行、内定後フォローまで一貫して支援。また、AIによるスカウト自動化サービス「RecUp」を展開し、採用活動の効率化と成功を後押しします。採用の課題に悩む企業に、実践的かつ柔軟なソリューションを提供しています。