採用においてAI活用を行う5つのメリットとは?手法や導入の流れ・事例を解説

生活のさまざまな場面で活用されているAI技術ですが、近年、採用活動にAIを活用する企業は増加しています。採用活動にAIを活用する上で、「採用でAI活用を行うメリットは?」「AIの具体的な手法や導入する流れは?」などの疑問が生じるでしょう。

そこで本記事では、採用におけるAI活用とはどういうものか、AIを活用するメリット、注意点などを紹介します。また、AI活用の手法や導入の流れ、事例などについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

採用におけるAI活用とは?

近年、さまざまな企業や組織で、採用活動にAIツールや人工知能を活用しています。Thinkings株式会社の調査によると、2023年度の採用活動においてAIツールを活用したと答えた企業は、全体の43%でした。特に、候補者と採用担当者が直接接する場面でのAI活用が増えている傾向です。

また、現在労働人口の減少が進んでおり、採用市場はさらに厳しくなる可能性が高いと考えられています。そのため、採用活動にAIを取り入れることで、効率化と質の向上をもたらすことが重要です。

参照:AI活用の有無が採用活動の成否に影響。活用した81.4%が採用目標数を達成、73.3%が人員リソースに充足|Thinking株式会社

採用におけるAI活用を行う5つのメリット

ここからは、採用におけるAI活用を行うメリットを紹介します。今回紹介するメリットは、以下の5つです。

  • マッチング精度の向上
  • 採用費用の削減
  • 人事部や採用チームの少数精鋭化
  • 合否の意思決定の補強
  • 担当者のバイアスの排除

①マッチング精度の向上

採用活動でAIを活用することで、候補者と企業のマッチング精度の向上が期待できます。仕事のスキルや給与、傾向などのさまざまな情報を噛み砕いて、候補者と採用ポジションをマッチングさせることが可能です。また、候補者とのミスマッチを防げることから、採用後の離職率の低下も期待できます。

②採用費用の削減

候補者とのメールのやり取りや、面談の日程調整などをAIに任せることで、採用費用の削減が可能です。候補者ひとりひとりにかかるコストや、人的リソースを減らせます。また、候補者とのマッチング精度を向上できるため、トレーニングコストなどの間接的な採用費用も削減できます。

③人事部や採用チームの少数精鋭化

人事部や採用チームは、非常に重要な役割を担っており、さまざまな種類の業務があります。しかし、企業によっては、サポート的な立ち位置として考えられていることが原因で、人員不足や予算不足に陥る可能性があります。

そこで、時間がかかる仕事をAIに任せることで、より多くのコア業務に人員を配置することが可能です。その結果、人事部や採用チームの少数精鋭化につながります。

④合否の意思決定の補強

AIツールを使用して、候補者の回答を分析・解釈します。企業に足りていない人材や企業と候補者の適合度、パフォーマンスなどを予測することで、合否の意思決定の補強が可能です。

⑤担当者のバイアスの排除

採用活動は、採用担当者の経験や勘などによる無意識のバイアスが影響しやすいです。AIは、人間のように評価基準がばらつくことがなく、常に一貫した基準で候補者を評価するため、担当者のバイアスを排除してくれるでしょう。

また、担当者の経験とデータを上手く組み合わせることに成功すると、公正な採用プロセスや選考につながる可能性が高いです。

採用においてAI活用を行う際の注意点

続いて、採用においてAI活用を行う際の注意点を紹介します。AIに頼ることは大事ですが、完璧ではないため注意しなければいけない点がいくつか存在します。今回紹介する注意点は、以下の通りです。

  • データの正確性や信頼性を検証しづらい
  • 組織の多様性が大きく損なわれる可能性がある
  • 不公平や差別などの倫理的な問題につながる可能性がある

それぞれ、詳しく解説します。

データの正確性や信頼性を検証しづらい

AIツールには、フォーマットの選択肢に惑わされやすいという欠点があります。たとえば、企業が求めているすべての素質を兼ね備えた候補者がいたとします。しかし、その候補者が提出した応募書類や履歴書に使用されている箇条書きのスタイルが合っていない場合、AIのリストに登録されない可能性があるのです。

また、スキルの高い人物に関するデータは揃えやすい傾向ですが、不採用となった候補者や退職者のデータを集めることは困難です。データを過去にさかのぼって集めるためには、厳しい手順が必要であったり、個別に同意を得なければいけなかったりなど、時間がかかってしまいます。場合によっては、数年かかる可能性もあります。

組織の多様性が大きく損なわれる可能性がある

採用活動において、実務経験が少ないが、性格や趣味、人柄などから採用となるケースは珍しくありません。しかし、AIはデータに基づいて評価を行うため、書類選考で除外される可能性があります。特に、性格や趣味、人柄などの情報を考慮できないAIツールを使用していると、可能性は高くなるでしょう。その結果、組織の多様性が損なわれる可能性があります。

多様性が損なわれた組織は、創造性が発揮されにくい可能性があります。将来的には、性格や趣味、人柄などの情報を考慮できるAIツールが登場する可能性がありますが、現状では困難です。リスクを回避するためには、AIツールを活用する前にリスクを洗い出したり、AIを活用しない採用プロセスを追加したりするなど、工夫する必要があります。

不公平や差別などの倫理的な問題につながる可能性がある

性別や人種、年齢など差別的なスクリーニングの設定をしていない場合でも、過去の通過率に基づく機械学習から、女性や外国人、高齢者などを低く評価するアルゴリズムになる可能性があります。意図しない差別を防ぐためには、アルゴリズムを透明化することが必要です。

また、候補者のスクリーニングにAIを活用した場合、候補者が不安を抱く可能性もあります。そのため、企業がAIを活用する理由や、AIを活用する部分とそうでない部分を明確にしておかなければいけません。

採用におけるAI活用がおすすめな企業

採用におけるAI活用がおすすめな企業は、以下の通りです。

  • たくさんの人数を採用している企業
  • スキルの高い人物の採用に苦戦している企業
  • 戦略立案などのコアな業務にかける時間が足りない企業

たとえば、毎年数百人から数千人を採用している企業の場合、資格や特定のスキルなどの制限を設けずに募集をすると、応募が途絶えることは少ないでしょう。そこで、労働市場分析やスキルマッチング、候補者との日程調整などをAIに任せることで、採用業務の効率を向上できます。

また、スキルの高い人物の採用に苦戦している企業も、AIを活用することで得られるメリットは多くあります。候補者と企業のマッチング度の向上やパフォーマンスの予測が可能なためです。

さらに、ルーティン化している業務をAIに任せることで、余剰時間が発生します。発生した余剰時間をコアな業務にかける時間に充てることができ、業務に集中できるでしょう。

採用におけるAI活用の手法

ここからは、採用におけるAI活用の手法を紹介します。今回紹介する手法を参考にして、採用にAIを役立てていただければと思います。

ChatGPTなどの生成AI

ChatGPTなどの生成AIは、プロンプトを入力することで、自然な文章を生成できるAIツールです。生成AIは、膨大な学習データをもとに高クオリティの文章を生成できるため、求人情報の作成に役立ちます。企業の魅力を紹介する文章や、社員インタビューの記事などの作成も可能です。

ただし、生成された文章は、正確性や適切性は保証されていません。また、機械学習の元となるWebコンテンツに対して、文章の著作権侵害が生じる可能性があります。そのため、生成された文章が正確かつ適切かどうかや、著作権の侵害について確認しておきましょう。

AIソーシング

ソーシングは、数多くの候補者の中から、自分の企業に合いそうな候補者を探す仕事のことです。人事部や採用チームの仕事の中でも困難で、時間がかかる作業のひとつといえます。AIを活用した採用管理システムを導入することで、さまざまな情報源の中から有力な候補者の数を割り出すことが可能です。

AIマッチング

AIマッチングは、候補者ごとにランキングスコアを与えて、もっとも価値のある候補者を探し出す手法です。迅速に探し出すことが可能で、候補者ひとりひとりを適切なポジションに配置できます。手作業でマッチング作業を行うと、時間と手間がかかるため、ヒューマンエラーが発生する可能性があります。

AI人材データベース管理

AI人材データベース管理は、候補者のデータベースを常に最新の状態に保つ手法のことです。候補者の最新のデータベースがあれば、新しい人材をチームに加える際に役立ちます。たとえば、転職希望者を予測して求人情報と関連づけたり、時間を大幅に節約できたりすることが可能です。

AIチャットボット

AIチャットボットは、メッセージツールを通して候補者とコミュニケーションを取る手法で、24時間365日対応することが可能です。候補者全員とコミュニケーションを取ることに苦戦している企業に、おすすめの手法と言えます。また、数百人、数千人への対応もできるため、大量採用をしている企業にもおすすめです。

AIによるソーシャルメディア分析

ソーシャルメディア分析とは、ヘイトスピーチやネットのいじめ、脅しなどに候補者が関わっていないかを分析することです。ソーシャルメディア分析をAIに任せることで、数多くの候補者を評価し、迅速かつ丁寧に分析を行えます。

ただし、候補者全員がソーシャルメディアを利用しているわけではありません。また、ソーシャルメディアのアカウントを持っているが更新していない人や、偽のアカウントを持っている人なども存在するため、注意が必要です。

AIスクリーニング

AIスクリーニングは、履歴書の構文分析プログラムを利用し、履歴書をスクリーニングする手法のことです。採用担当者が履歴書を見る前に、AIスクリーニングを行う企業が増加しています。

ただし、履歴書には決まったフォーマットが存在しないため、構文分析はうまくいかない可能性もあります。履歴書の書き方や設定ミスなどにより、有力な候補者が除外される場合があるため、十分に注意しましょう。

AI性格診断

候補者が入社する前にAI性格診断を取り入れることで、候補者の性格を理解します。企業に足りない部分にマッチする性格の人を探し出し、補うことが可能です。ただし、信頼度の高い診断を実施するためには、ある程度のサンプル数が必要です。サンプルを集めるには時間がかかるため、注意しましょう。

AIスケジューリング

AIスケジューリングは、採用担当者のスケジュールを確認して、候補者の適切なスケジュールを設定する手法です。候補者とやり取りしているメールの文面から、適切なスケジュールをAIが即座に設定できます。AIスケジューリングを活用することで、スケジュールのミスを防止することが可能です。

AIドリブン面接

AIドリブン面接では、候補者はウェブカメラを通して質問に答えます。候補者が質問を聞いたときの反応スピードや声の調子などをAIが分析し、採用担当者との面接を行う前に候補者をランク付けします。多数の候補者を短時間で評価できるため、採用担当者の負担を軽減することが可能です。

感情認識AI面接

感情認識AI面接とは、AIが候補者の感情や表情を分析する面接の形式のことです。AIを使用しない通常の面接では、候補者の感情は面接官によって判断されます。しかし、感情認識AI面接では、候補者の表情や声のトーン、ボディーランゲージなどから感情を読み取って、非言語情報を採用の判断材料にすることが可能です。

採用におけるAI活用導入の流れ

続いて、採用におけるAI活用導入の流れについて紹介します。AIを導入する場合は、以下の流れで行うことが一般的です。

  • 導入目的や現状の課題を確認
  • 適切なAIツールを選択
  • AIツールの全体フロー設計
  • AIに学習させるデータを用意
  • AIツールのクオリティを評価
  • 効果測定を定期的に行い改善

それぞれ、詳しく解説します。

導入目的や現状の課題を確認

まずは、採用活動にAIを導入する目的と、現状の課題や改善しなければいけない点を確認します。具体的にどの業務の効率を上げたいのか、どの部分を改善したいのかを洗い出しましょう。そして、どの業務をAIに任せるかを明確にすることが必要です。

適切なAIツールを選択

次に、どのAIツールを使用するかを選択しましょう。各AIツールの費用や機能などを比較し、どのAIツールが自社にもっとも適しているかを検討することが大切です。「目的を達成するためには、どのAIツールが必要か」「AIツールを選択する際に重要な要素はなにか」などの観点から選びましょう。

AIツールの全体フロー設計

企業に導入するAIツールが決定したら、実際にどのように運用していくかといった全体フロー設計を行います。具体的には、どの採用プロセスをAIに任せるか、その採用プロセスの前後のフローをどう整えるかなどです。

AIに学習させるデータを用意

全体フローの設計が完了したら、AIに学習させるデータを用意しましょう。データの用意は、AIを利用する上で欠かせません。ただデータを集めるだけではなく、AIが分析できるような正確な情報を用意する必要があります。

AIツールのクオリティを評価

実際にAIツールを導入し、活用を始めた後は、AIツールのクオリティを評価しましょう。改善点がある場合は、指標の見直しを行ったり、AIをチューニングし直したりすることが必要です。

効果測定を定期的に行い改善

AIツールは、導入したら終了ではありません。AIツールを導入した後も、業績や採用状況などの効果測定を定期的に行い、より効果的に活用できるように、改善を続ける必要があります。

採用におけるAI活用の事例3選

最後に、採用におけるAI活用の事例を紹介します。今回紹介する事例は、以下の3社です。

  • ソフトバンク株式会社
  • キリンHD
  • 株式会社横浜銀行

ソフトバンク株式会社

引用元:ソフトバンク

ソフトバンク株式会社は、2017年からAIツールを活用しており、エントリーシート選考にかける時間を約75%削減しています。

また、2020年5月には、客観的な視点かつ統一された基準から候補者を評価するために、動画面接にもAIツールを導入しました。AIにより不合格と判断された場合は、最終的に採用担当者が合否を判断しています。AIツールだけに頼らないことで、選考の正確性を保っているのです。

キリンHD

引用元:キリングループ企業情報サイト

キリンHD(キリンホールディングス)は、2022年度の新卒採用のPR動画選考の際に、AIを使用した解析実験を行うことを発表しました。採用担当者の先入観で合否が決まることを防ぐことが狙いです。

また、PR動画やエントリーシートの選考にかける時間を約3割減らすことを目標としています。さらに、空いた時間で候補者とのコミュニケーションをとる時間を増やす狙いもあります。

株式会社横浜銀行

引用元:横浜銀行

株式会社横浜銀行は、2019年度の新卒採用から、エントリーシートの選考にAIツールを活用しています。エントリーシート上で、会社への理解や熱意が表れやすい項目をAIによって分析し、適性検査だけでは測れない採用基準を定めることに成功しました。

AIツールを導入したことによって、候補者の志望度の高さを見極められるようになり、客観的で公正性の高い評価が可能になったのです。

AIスカウトならRecUp

今回は、採用におけるAI活用について紹介しました。採用活動は、AIを活用することでマッチング精度が向上したり、採用費用を削減できたりなど、さまざまなメリットがあります。ただし、AIを活用する場合は、導入の流れや注意点などを理解しておくことが必要です。

RecUpのAIスカウトサービスでは、AIが自動で魅力的なスカウトメールを生成し、求職者の目に留まる内容を瞬時に作成できます。返信率や開封率をアップし、採用の効率を向上することが可能です。「求職者に合わせた文章の作成に時間がかかる」「たくさんの求職者にスカウトメールを送信したい」などの悩みがある採用担当者は、ぜひ問い合わせください。

RecUpの
お問い合わせをする

監修者プロフィール

福田 光樹
福田 光樹
株式会社Delight
RecUp事業部 カスタマーサクセス部門責任者

新卒から求人広告事業に従事し、企業の採用課題に向き合う中で、実践的な支援スキルを培う。その後、自社開発のAIを活用した採用支援ツール「RecUp」の営業責任者として、プロダクトを活用した採用戦略の設計・実行支援に従事。並行して自社の採用活動にも深く関与し、事業成長フェーズにおける人材要件定義、母集団形成、採用面接など、実務から戦略まで幅広い領域を担当。現在はカスタマーサクセス部門の責任者として、100社以上の採用支援実績をもとに、採用活動の最適化を支援している。実務と戦略の両視点を持つ実践型の採用コンサルタントとして、現場に寄り添いながらも成果に直結する支援に定評がある。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です