
近年、採用代行は企業の採用活動の効率化や質の向上に欠かせないサービスとして注目を集めています。外部の専門業者に採用業務を委託することで、企業は時間やコストを削減でき、専門知識やノウハウを活用した効果的な採用が可能になります。
一方で、「採用代行は違法になるのではないか」と不安に思う方も少なくありません。実際には、委託内容や手続きの方法によって合法・違法が分かれるため、事前の理解が不可欠です。
本記事では、採用代行の基本から、違法になるケース・ならないケース、委託募集の許可に関する手続きまで、企業が安心して活用できる情報を徹底的に解説します。
採用代行とは?

採用代行とは、企業が行う採用活動の一部または全部を、外部の専門業者に委託するサービスのことです。
求人票の作成、応募者の選考、面接の調整や実施、内定者へのフォローなど、採用に関わる幅広い業務を代行してもらうことが可能です。企業側は自社のリソースを採用戦略の立案や面接評価などの重要業務に集中させることができ、効率的かつ専門的な採用活動を実現できます。
採用代行の利点としては、まず採用コストの削減があります。社内で行う場合、人事担当者の工数や広告費がかかりますが、外部委託することでこれらを効率化できるのです。代行業者は業界知識や応募者データベースを持っており、適切な人材の選定やスピーディーな対応が可能です。
ただし、採用代行を導入する際には、業務範囲や契約内容によっては職業安定法上の規制が適用される場合があります。特に「委託募集」となる場合は、許可を得ずに行うと違法になる可能性があるため、事前に適切な手続きや法令の確認が重要です。
採用代行は違法になる?

採用代行は、企業が採用業務を効率化するために外部の専門業者に委託する便利なサービスですが、すべての場合で合法というわけではありません。採用代行を導入する前には、自社の委託内容が許可を要する範囲に含まれるかどうかを確認することが不可欠です。
本セクションでは、採用代行が合法となる場合と違法になる場合のポイントを整理し、企業が安心して活用するための基準を解説します。
規定を満たしていれば違法にはならない
採用代行サービスは、企業が採用業務の一部を外部の専門業者に委託する「委託募集」に該当します。この場合、委託を行う企業は厚生労働大臣や都道府県労働局長の定める許可基準を満たす必要があるのです。
これらの基準は、労働者が不利な状況に陥らないようにするためのルールであり、募集主と受託者の双方に適用されます。具体的には、職業安定法第36条や第60条、さらに同法施行規則第37条1項3号が関連しており、準拠することで、採用される人が安心して働ける環境と雇用条件が確保されているのです。
許可基準には以下が含まれています。
- 募集者の法令遵守
- 労働条件の明示
- 社会保険・労働保険の適切な加入状況
- 報酬体系の透明性など
これら規定を遵守することで、採用代行を通じて行われる募集は合法的に行えることが保証されます。申請時には契約内容や業務範囲、労働条件などの資料提出が必要ですが、一般的な運営を行う場合においては、これらを満たすことはそれほど難しくありません。
規定に満たない場合は違法になる
採用代行サービスにおいて、委託企業(採用を依頼する企業)と受託企業(代行業者)の双方が、法定の許可基準を満たさない場合は違法となります。
該当するのは、委託先の代行業者が厚生労働大臣や都道府県労働局長からの許可を取得していない場合や、許可基準の一部でも遵守していない場合です。このような状況では、採用活動を委託する行為自体が職業安定法に違反し、企業側も罰則の対象になる可能性があります。
違法となる主なケースには以下が挙げられます。
- 募集条件や労働条件の明示が不十分である
- 社会保険や労働保険に未加入の事業所が関与している
- 報酬体系が法令で定められた範囲を逸脱している
- 代行業者が過去に法令違反の経歴がある
- 許可取得のための届け出を提出していない
委託企業は、採用代行を利用する前に、代行業者が適切な許可を取得しているか、許可基準を遵守しているかを必ず確認する必要があります。
許可基準を満たしていない代行業者に依頼すると、採用活動全体が違法とみなされ労働者保護の観点から重大な問題となりますから、契約前には業者の許可状況や過去の実績、遵守状況を精査し、必要に応じて書面で確認するようにしましょう。
採用代行で委託募集の許可が必要・不要になるケースとは?

採用代行を利用する際に最も注意すべき点の一つが、委託募集に該当するかどうかです。採用活動を外部の専門業者に委託する場合、厚生労働省や都道府県労働局の許可が必要となるケースと不要なケースがあり、事前の確認を怠ると法令違反になる可能性があります。
本セクションでは、企業が許可を得るべきケースと不要なケースを整理し、採用代行を安全に活用するための基準を詳しく解説します。
必要になるケース
委託募集の許可が必要となるのは、企業が採用活動の一部または全部を外部業者に委託する場合です。厚生労働省の「募集・求人業務取扱要領」によると、委託企業(募集主)が満たすべき要件は以下の通りです。
委託企業(募集主)の要件リスト
項目 | 内容 |
事業主の徳性 | 職業安定法および労働関係法令に重大な違反がないこと |
労働条件 | – 適切で法令に違反していないこと- 同地域・同業種の賃金水準から著しく低くないこと- 募集に係る業務内容と労働条件が明示されていること- 適用事業所が社会保険・労働保険に適切に加入していること |
報酬 | 厚生労働大臣の認可を受けた報酬以外の財物を労働者に与えないこと |
これら要件をすべて満たすことで、法律に違反することなく安全に委託募集を行うことができます。健全な企業運営を行っていれば、特別に難しい基準は少なく、多くの場合は自然にクリアできる項目が中心です。
許可基準を満たすことで、労働者が安心して応募・就業できる環境を整えることも可能です。労働条件の明示や保険加入の徹底は、採用活動全体の透明性向上にもつながりますから、法的リスクを回避しつつ外部業者の専門知識やノウハウを最大限に活用した効率的な採用活動が可能となります。
不要になるケース
採用代行は委託募集に該当する場合には許可が必要ですが、自社で募集・選考を行い、採否判断まで対応する場合には「委託募集に当たらない」と解釈でき、許可は不要となります。
許可不要となる主な条件リスト:
- 自社で募集・選考を行い、採否判断まで対応する場合
- 採用試験問題の作成・実施の補助を受ける場合
- 面接官研修の支援を受ける場合
- 人材紹介会社や転職エージェントによる職業紹介(求職者の斡旋)
- ヘッドハンティング会社による候補者紹介
これらの条件に該当すれば、採用代行を利用しても委託募集とはみなされず、厚生労働大臣や労働局の許可を取得する必要はありません。ただし、業務内容が曖昧な場合や一部の作業が実務的な募集に近い場合は、事前に確認することが安全です。
採用代行を利用する際には、委託する業務範囲や人材の雇用経路によって、許可が必要かどうかが変わることを理解しておく必要があります。したがって、外部サービスを利用する前に、依頼する業務内容や範囲が「委託募集」に該当するのか、許可を取得する必要があるのかを確認することが重要です。
採用代行で委託募集を行う際の申請手順を解説!

採用代行を活用して委託募集を行う場合、職業安定法に基づく許可申請が必要です。この申請手順を正しく理解し、必要書類を揃え、期限内に提出することが重要です。
本セクションでは、申請に必要な書類の準備から提出、審査までの流れを順を追って解説し、企業が安心して採用代行を利用できるよう具体的な手順を整理します。
必要な申請書類を準備する
委託募集を行うためには、まず必要な書類を準備することが第一歩です。申請は都道府県労働局長に対して行うことになり、提出書類に不備があると許可取得に時間がかかるだけでなく、最悪の場合は申請が受理されないこともありますから、事前に必要な書類を確認し正確に揃えることが重要です。
委託募集の申請に必要な主な書類:
- 厚生労働省発行「委託募集許可等申請書(様式第3号)」
- 上記許可の内容を証明する帳簿や書類
- 募集に係る労働条件や業務内容を明示した資料
- 事業所の社会保険・労働保険加入状況を証明する書類
- 報酬体系や契約内容を示す書類
委託募集には条件があり、都道府県労働局長の許可に加えて、厚生労働大臣の許可も必要となります。具体的には以下の条件に該当する場合です。
- ひとつの都道府県から30人以上の募集を行う場合
- 募集人数が100名以上になる場合
これらに該当する場合は、通常の申請書類に加えて、大臣許可用の書類も準備する必要があります。必要書類の整理と確認を徹底することで、申請手続きはスムーズに進み、後のトラブルや法的リスクも回避できます。
提出期限までに書類・資料を提出する
必要な申請書類の準備が整ったら、次は期限内に提出する段階です。委託募集の申請では、書類提出の期日が法令で定められており、期限を過ぎてしまうと申請が受理されない、もしくは審査に遅れが生じかねないため、提出期限を把握し余裕を持った提出スケジュールを立てることが重要です。
委託募集申請書類の提出期限:
提出先 | 期限 |
都道府県労働局長 | 募集開始月の14日前まで |
厚生労働大臣 | 募集開始月の21日前まで |
提出方法は、郵送または窓口での提出が基本ですが、到着日が審査開始日とみなされる場合もあるため、余裕を持った送付が推奨されます。提出前には書類に不備がないか再度確認し、コピーを控えておくことも大切です。
期限内に正確な書類を提出することは、採用代行を合法的に活用するための最も基本的かつ重要なステップです。
審査結果を確認する
書類を期限内に提出したら、次は審査結果の確認です。委託募集の許可申請は、提出された書類をもとに労働局が内容をチェックし、法令や許可基準を満たしているかを審査します。
審査には一定の期間がかかるため、あらかじめ余裕を持ったスケジュールを立てておくことが重要です。審査中に書類内容の補足や修正を求められることもあるため、提出後も連絡を受け取れる体制を整えておくと安心です。
審査結果は、通常、書面または郵送で通知されます。許可か不許可、もしくは条件付きでの許可という3つの結果になります。
審査結果の通知を確認することで、今後の委託募集運営における適法性を担保でき、違法リスクを回避しながら採用代行を活用することが可能です。常に審査内容と通知を正確に把握し、適切に管理することが安全な採用活動の鍵となります。
採用代行を活用する際の3つのポイントを解説!

採用代行を活用すると、企業は専門的なノウハウを外部のプロに委託でき、採用業務の効率化やコスト削減を実現できます。しかし、代行業者に丸投げするだけでは、期待した成果が得られないことも少なくありません。
そのため、採用代行を安全かつ効果的に活用するには、
- 業務分担を明確にする
- 代行業者と円滑に情報共有できる体制を整える
- 業者の得意分野やスキルを見極める
という3つのポイントを押さえることが重要です。本セクションでは、この3つのポイントを順に解説し、企業が効率的に採用代行を運用できる具体的な方法を示します。
①業務分担を明確にする
採用代行を活用する場合、まず最優先で考えるべきは、企業と代行業者の業務分担を明確にすることです。
求人票の作成、応募者のスクリーニング、面接の日程調整、内定通知の送付など、採用に関わる業務は多岐にわたりますから、どの業務を代行業者が担当し、どの業務を自社で行うのかを事前に明確化しなければ、作業の重複や漏れが発生し、採用活動全体の効率が低下します。
業務分担を文書化しておくことも重要です。契約書や業務指示書に、代行業者の担当範囲、企業側の対応範囲、報告のタイミングや連絡方法を明記しておくことで、後から問題が起きても責任の所在を明確にできます。
業務分担を明確化することで、効率的な採用運営が可能になるだけでなく、応募者への対応品質も向上し、採用成功率の改善につながる他、内部の管理体制の整備にもプラスの影響を及ぼし、担当者同士の混乱やトラブルを未然に防ぐ効果があるのです。
②代行業者と円滑に情報共有できる体制を整える
採用代行を効果的に活用するためには、企業と代行業者間の情報共有体制をしっかり整えることが不可欠です。
情報共有が不十分だと、応募者の進捗状況や面接日程の調整、応募条件の変更などがタイムリーに反映されず、採用活動全体に遅延やミスが生じる可能性があります。特に複数の担当者や部署が関わる場合、情報が属人化すると業務の抜け漏れや重複が発生しやすくなります。
円滑な情報共有体制を構築するためには、まずコミュニケーションのルールを明確にすることが重要です。応募者情報や選考結果の報告頻度、使用するツールやシステム、担当者間の連絡方法などを事前に定めておくと、双方が迷わず対応できます。
定期的なミーティングや進捗報告を行い、問題や改善点を即座に共有する仕組みも重要です。週1回の定例ミーティングで応募状況や選考の進捗を確認し、必要に応じて業務分担やスケジュールを調整することで、採用プロセスの透明性も高められるでしょう。
③業者の得意分野やスキルを見極める
採用代行を活用する際には、代行業者の得意分野やスキルを事前に見極めることが非常に重要です。すべての代行業者が同じ強みを持っているわけではなく、業種や職種によって対応力やノウハウに差があります。
業者のスキルや実績を見極める方法として、過去の成功事例や対応可能な業務範囲を確認することが有効です。過去の採用人数、業種別の採用成功率、選考フローのサポート範囲、使用する採用管理システムやマーケティング手法などに加え、業者がどの程度まで企業側の戦略や採用方針に合わせて柔軟に対応できるかも重要な判断ポイントです。
代行業者の強みと自社の採用ニーズを照らし合わせることで、無駄な作業やトラブルを避け、成果の出やすい採用フローを構築できます。最終的には、業者の得意分野やスキルを正確に把握し、適切な役割を割り当てることが、採用代行を最大限に活用するための鍵となります。
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採用代行を活用する際は、違法性や許可の有無を正確に把握し、法令に沿った手続きと運用を行うことが最も重要です。委託募集の許可を得るためには、必要な書類を準備し、提出期限を守り、審査結果を確認する一連の手順を正確に踏む必要があります。
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